社会福祉法人あさがお福祉会さま
2022/08/15
社会福祉法人あさがお福祉会
利用者さまとのやり取りを円滑にし
職員の意識変革を刺激する
四国・徳島市で介護福祉事業の新たな価値創出に向けた戦略的事業を展開する、あさがお福祉会さまは、2020年4月の小規模特養『KAGOYA LIFE』のオープンを機に、6事業所に8台のcomuoonを導入されました。特徴的なのは、すべての導入事業所で主に利用者さまへの個別対応にcomuoon を活用されている点です。
社会福祉法人あさがお福祉会 介護部長 小規模特養 KAGOYA LIFE 管理者
西川 珠姫さま
導入シーン | 利用者さまへの個別対応時に使用 |
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導入機器 |
comuoon connect type WSG、comuoon connect type HS、 |
導入時期 | 2020年4月から |
導入前
職員が〝聴こえやすい話し方〟を心がけ、特にサポート機器は使っていなかった。
呼びかけへの反応が薄い利用者さまへの声かけが、どうしても一方的になりがちだった。
導入後
反応が薄かった利用者さまの表情が柔らかくなったり、うなずく回数が増えたり、微妙な変化が見られるようになった。
利用者さまの変化を実感することで職員の意識が変わり、コミュニケーションの質が向上した。
6事業所に8台のcomuoonを導入
Q. どのようにcomuoonをお使いですか
西川:グループ17事業所のうち、小規模特養・ショートステイ・ケアハウス・小規模多機能居宅介護・グループホーム・ヘルパーステーションの6事業所に、コミューンを導入しました。事業所によって対象となる利用者さまの聴こえにくさや認知機能の程度、職員の方の動き方が異なるので、それぞれ現場の事情に合った使い方をしています。
小規模特養やグループホームなど認知機能の低下で反応が薄い利用者さまが多い事業所では、お一人お一人の反応を見ながら、いろいろな使い方を模索しています。ケアハウスは認知機能に問題はないけれど聴こえにくい利用者さまが多いため、窓口カウンターに設置して、手続きや大切な内容を個別にお伝えする際に使っています。ショートステイや小規模多機能も利用者さまとの個別対応時に使い、ヘルパーステーションでは聴こえにくい利用者さまのお宅に伺う際に持参しています。
このように、あさがお福祉会では主に個別対応時に利用しています。また、ご家族も高齢で聴こえにくい場合があるため、契約や面談時など重要事項をお伝えする際に使う機会が少なくありません。
さらにショートステイなどでは、テレビの音量に対する他の利用者さまからのクレーム対策にも役立っています。聴こえにくい利用者さまのお部屋でcomuoonを使うと、通常のボリュームでしっかり聴こえるのでトラブルが回避できます。中には「これいいね、自宅でも使ってみたい」という利用者さまもいらっしゃるようです。
Q.コロナ禍の面会制限下で役立つ場面も増えているそうですね
西川:直接面会ができないので、グループホームではガラス越しの面会時に使っています。今までは、マスクをしたご家族の声がガラス越しでは届きにくく、職員が通訳せざるを得ない状況でした。現在はドアの向こうのご家族にマイクを渡し、利用者さまとcomuoon越しに会話をしてもらっています。ZOOMやLINEを使っている事業所では、タブレットの音声が利用者さまに聴き取りづらいため、comuoonをスピーカー代わりに使うことで会話がスムーズにできるようになりました。マスク越し、ガラス越し、アクリル板越し、タブレット越しの面会制限下において、とても有効なコミュニケーションツールになっています。
Q. 個別対応で使われるケースがほとんどという点は特徴的です
西川:むしろ私たちは、集団活動時に使うというイメージがありませんでした。他社の事例を伺って、なるほどと新鮮な思いがします。
もともと他社に比べて小規模な事業所ばかりで、利用者さまがそろって行動するシーンはほとんどありません。利用者さまのペースに合わせた個別対応を優先し、食事も決まった時間に一緒に摂るというより、利用者さまの好きなタイミングと場所(食堂・自室)で提供しています。そのため日常的に個別対応の機会が多く、当初からお一人お一人とのやり取りにcomuoonを使っています。今後は個別対応の幅を広げながら、グループの通所介護事業所などで集団対応時にも使ってみたいですね。
Q. 利用者さまの反応はいかがですか
西川:認知機能に大きな問題はなく、単に聴こえにくいだけの利用者さまの反応は、「よく聴こえる」「聴き取りやすい」と明確です。一方、認知機能が低下し、もともと声かけへの身体的反応が薄い利用者さまの場合、「まばたきの回数が増えた」「表情がやわらかくなった」といった微細な反応が多いようです。
反応が薄くても聴こえていないわけではなく、認知症の進行などさまざまな原因で、聴こえていても身体的反応がしにくいのかもしれません。いずれにしても、comuoonを使うことで何らかの反応や変化が見られるので、今後は継続的に使って利用者さまの反応の変化を丁寧にキャッチしながら、介護の質を高めていきたいと考えています。
介護福祉の新たな価値を創出する
Q. comuoonを知ったきっかけを聞かせてください
西川:comuoonを紹介するショートムービー『気づかなくてごめんね』を制作した犬童一利監督から、弊社の統括施設長に情報が伝わりました。聴こえにくさが認知症と混同される事実に警鐘を鳴らす内容を見て、より高次な介護福祉を追求する上で有効なツールと判断したそうです。
情報が伝わったのは、ちょうど地域密着型介護老人福祉施設(小規模特養)『KAGOYA LIFE』の開設準備を進めていた2020年の年明けでした。『KAGOYA LIFE』は「既存の特養とは一線を画す、新たな価値と魅力のある施設を作りたい」という構想のもと、2020年4月にオープンした事業所で、未知のコミュニケーションツールを導入しやすいタイミングでした。私たち各事業所のリーダーには統括施設長から、「どんな使い方ができるか、現場で自由に使ってみてほしい」という話がありました。
Q. あさがお福祉会さまの事業展開は各界の注目を集めています
西川:私たちには、徳島という地方都市で事業展開しているからこそ、既存の枠にとらわれず新たな価値創造に挑戦しようという基本思想があります。一般的に介護福祉業界では、利用者ニーズにのみ焦点が当てられがちですが、私たちは同時に、職員にとって魅力的な職場づくりを重要視します。仕事を通じて新たな経験をし、生き生きと働いて自己成長を実現してほしい。そのため現場で使用する機器や用具も、既成概念にとらわれず、柔軟な解釈で積極的に取り入れようという気風があります。
一般的に目新しい機器や用具を導入する場合、現場に抵抗感が生じるケースは珍しくありません。しかし、新設事業所なら新しいツールを最初から導入しやすい。そこで小規模特養『KAGOYA LIFE』のオープンに合わせて、6事業所へ導入しました。あいにくコロナ禍で利用者さまの入所が当初の予定より遅れたため、実際に本格的に使い始めたのは2020年の秋ごろでした。
職員の意識変革のきっかけとして
Q. 職員の皆さんにも変化が出てきたそうですね
西川:日頃から私たちは、介護福祉にもっとも大切なのはコミュニケーションの〝質〟と考えています。とはいえ、利用者さまに沿ったコミュニケーションを心がけつつも、反応が薄い方への声かけはどうしても一方的になりがちでした。
しかし、comuoonを使うことで「表情が以前より柔らかくなった」「うなずく回数が増えた」といった変化が見られるようになると、職員のモチベーションも上がります。「こんな反応があるなら、もっとこうしよう」「うなずく瞬間が見たいから、もっと顔をよく見よう」など、自発的な意識の変化が見られるようになりました。
まだコミューンを使っていない職員もいるので、成功事例を共有し、ルールの統一を進めながら、誰でも気軽に使える環境を整備したいと思っています。
Q.comuoonに寄せられる期待は大きいですね
西川:職員の意識が変わり、コミュニケーションの〝質〟が高まるとするなら、ある意味でcomuoonは職員教育のツールと言えます。〝聴こえ〟をサポートするコミュニケーションツールとしてだけではなく、職員の意識や利用者さまとの関わり方が変わる相乗効果をもたらしてくれるのではないかと期待しています。
個別対応時にフットワーク軽く活用することで、コミュニケーションの〝質〟は着実に向上しつつあります。持ち運びが簡単で使い方もシンプルなcomuoonは、とても扱いやすいツールです。導入検討中の皆さんも、まずは使ってみてください。
※取材内容は2021年10月時点のものです。