WORKS

導入事例

倉敷市教育委員会さま

2022/07/05

倉敷教育委員会様 神原 尚洋さま

倉敷市教育委員会 × ロゴ:コミューン

教育委員会がリーダーシップをとり
「聴こえ」の環境整備に向け
地に足の着いた取り組みを
進めています

comuoonのニーズがもっとも高い教育現場において、実践的な導入と活用をリードしている、倉敷市教育委員会さま。その実績とともに、教育行政が導入に関わる意義と今後の展開について、お話を伺いました。

倉敷教育委員会

神原 尚洋さま

倉敷教育委員会 学校教育部指導課 特別支援教室推進室 室長。岡山県玉野市出身。大学卒業後、県立の支援学校(当時は養護学校)、倉敷市内の小学校3校に勤務。平成22年度より倉敷市教育委員会で、現場経験を生かした特別支援教育の環境整備に取り組んでいる。

導入シーン 倉敷市立老松小学校・倉敷市立西中学校の難聴学級
導入機器 comuoon connect Type HS/comuoon mobile Type HS/sound connect
導入期間 2015年11月から

導入前

市立小学校の難聴学級における学習支援が不十分だった。

倉敷市は岡山県下でも先駆的にICT教育に取り組んできたが、特別支援分野の環境整備は進んでいなかった。

導入後

生徒の英語への苦手意識が
軽減した。

聴き取りにくい英単語の子音がよく聴き取れるので正しい発音がしやすくなり、英語の学習意欲が高まった。

Q.comuoon導入の経緯について
お聞かせください

倉敷教育委員会様 神原 尚洋さま

平成27年度の11月、NPO法人日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会の「きこえのあしながさんプロジェクト」で、倉敷市教育委員会にcomuoon connectを1台寄贈していただきました。さっそく私が以前勤めていた老松小学校に貸し出し、難聴学級で使ってみることにしました。

しばらく使い続けているうちに、児童が「聴こえにくくなった」と言うので調べてみると、comuoonがちょっとしたトラブルで故障していたことがわかりました。つまり、それまでcomuoonの音がしっかり児童に届いていたことの、何よりの証明になったのです。 老松小学校を卒業した児童は、同じく難聴学級が設置されている西中学校へほぼ進みます。せっかくcomuoonを使って学習力・生活力を高めてきた子どもたちのチャンスが、中学進学によって失われるのは非常に残念だと思いました。そこで教育委員会で予算を確保し、老松小学校と西中学校の難聴学級へ新たに貸し出すことで、平成29年度からcomuoonを使った学習を続けられる環境を整えることにしました。

現在、西中学校の難聴学級には、4人の対象生徒が在籍しています。老松小学校から進学した生徒は慣れていますが、他の小学校から西中学校へ進んだ生徒は、comuoonで音が聴き取りやすくなったことにとても驚いていましたね。 平成29年度に導入したのは、ちょうど発売されたばかりのモバイルタイプでした。どこへでも持ち出せるので、難聴学級だけではなく通常学級で授業を受ける時にも使い、体育館や屋外・校外へ持ち出して利用するなど、活用範囲がグンと広がったようです。30年度末には、西中学校の対象生徒がそれぞれ公平に通常学級へ持ち出せるよう、モバイルタイプをもう1台追加購入しました。

Q.comuoon導入によって、どのような変化が
ありましたか

comuoonは「聴こえ」だけでなく「正しい発音」というメリットももたらしてくれました。これまで聴き取りにくかった英単語の子音がよく聴き取れるので、発音記号と一致する正しい発音がしやすくなり、英語への理解が深まったという声もあがっています。また国語で詩や漢文・古文の朗読など、利用場面が広がっているようです。正確な音を聴き取ることで理解が深まり、日本語のもつ抒情的な美しさに触れる機会が増えています。

実は、倉敷市では県内でもいち早く、デジタル教科書をはじめICT教育のインフラ整備が進められてきました。そこで今年度からは、サウンドコネクトをPCにつないで直接音声をcomuoonから出力し、英語のヒヤリング授業などに活用していきたいと考えています。 雨の日は児童・生徒にとって、ふだん以上に音が聴こえづらいのですが、comuoonがあれば窓の外で激しい雨音がしていても正しい音が聴き取れます。今後は、校外活動や修学旅行などあらゆる場面で、モバイルタイプのcomuoonがもっともっと活躍するでしょう。

副産物として、聴こえにくい大人にとってもcomuoonは大きな効果をもたらしています。難聴学級の児童・生徒の保護者の中には、聴こえにハンディのある方もいらっしゃいますが、保護者会で「先生の声が聴き取りやすい」と驚かれたそうです。また先生方からも、コミュニケーションがとりやすくなったと好評のようです。 comuoonの管理は、充電を含めて児童や生徒に任せています。自分たちにとって価値ある学習機材という認識があるようで、丁寧に大切に管理している姿を見ると嬉しいですね。

Q. 教育現場における「聴こえ」の環境整備に
関して、メッセージをお願いします

かつて7年間勤務した老松小学校で、難聴学級の隣にある自閉症・情緒特別支援学級を5年間担当した経験から、「聴こえ」をサポートする難しさは少なからず感じていました。聴こえる私が、同じ目線で子どもたちの支援を考えていくのには限界があります。児童・生徒にも私にも、どこか「聴こえ」への「あきらめ」があったように思うのです。

しかしcomuoonは、そんな「あきらめ」に対して、大きな希望をもたらしてくれました。聴こえにくい児童・生徒にとって、「音の記憶」は健聴者以上に大きな意味を持ちます。comuoonとの出会いで音の違いを知った彼らは、より音を意識するようになりました。子どもたちの目の輝きが、「音は裏切らない」という確信につながったように感じます。

通常、学習支援機器の導入は、各校単位で検討するのが一般的です。しかし数年で学校長が異動する状況下では、予算的にも運用面から見ても、未知の支援機器導入をスムーズに進めるのは難しいのが現実です。また導入効果は、機器ありきでは判断できません。使い方など現場の声に耳を傾けながら、地に足の着いた活用を模索しなければならない。機器というハード、使い方というソフトの両輪がそろって初めて、学習支援機器の価値は実証できます。そのために必要な、長期的かつ本質的なビジョン形成、環境整備、予算確保は、各校単位ではなく教育行政の中で包括的に担う方が現実的だと個人的には思います。

母方の祖父は目が不自由で、白杖を使っていました。子どもの頃、そんな祖父の手を引いて近所の海辺を散歩した記憶が今も私の中にあります。波の音や船の音は、よく聴こえるようでした。目は不自由でも、その場の雰囲気を感じ取る力はとても鋭かったと思います。私と特別支援教育との縁は、そんな日常の中にあった、当然の原体験につながっているのかもしれません。支援する環境をつくるのも、守るのも、活用するのも、「人の思い」。だから私はこれからも、中身のある支援にこだわっていきたい。

comuoonを開発した中石さんとはよく、現場の声をもとに活用方法や新たな可能性に関して情報共有をします。comuoonの進化が支援環境の充実につながり、支援環境の声がcomuoonをさらに進化させる。そんなやりとりを通して、私も「聴こえるのがあたりまえの社会」の創造に、少しだけ参加させてもらっている気がするのです。

※取材内容は2019年4月時点のものです。

導入事例で使用している製品

comuoon connect

comuoon connect Type HS

ワイヤレスのマイクで動きながら話すことができるタイプのコミューンです。

comuoon connect

comuoon mobile

comuoon mobile Type HS

電源が無い場所でも使用できるバッテリータイプのコミューンです。

comuoon mobile