上村美貴 さま 上村大二郎 君
2022/07/04
個人のお客さま ×
もう一度〝聴こえる喜び〟を
取り戻してもらうために
2020年7月、日本各地を集中豪雨が襲い、熊本県南部では球磨川が決壊。上村大二郎くん(被災当時/小学5年生)が家族と暮らす人吉市内の自宅にも濁流が流れ込み、愛用していたcomuoonが流されてしまいました。
そこで、もう一度〝聴こえる喜び〟を取り戻してもらえるよう、新しいcomuoonをお届けしました。
個人のお客さま
お母さま
上村 美貴さま
熊本県立熊本聾学校 小学部
上村 大二郎くん
導入シーン | 自宅でテレビ視聴時に使用 |
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導入機器 | comuoon SE |
導入時期 | 2015年4月から |
導入前
聴こえにくい事があたり前だと思っていた
新生児スクリーニング検査で聴こえにくいと診断され、3歳から補聴器を使い始めた。
テレビにはまったく興味がなかった。
導入後
聴こえることの楽しみ方を知った
テレビに初めて興味を持ち、歌うことが大好きになった。
家族みんながcomuoonを使うことで、「聴こえる音」がどんな音なのか認識できた。
命の危険を感じたあの日
大変な被害に遭われ、心からお見舞い申し上げます
私たちは夫婦でコンビニエンスストアを経営しており、当日もニュースや大雨情報をチェックしながら店に出ていました。
洪水注意報が警報に変わり、避難勧告が指示に変わる中、これは避難しないと危ない!と思って急いで自宅に戻り、1階にあったモノをできるだけ2階に上げ、急いでワンボックス車に4人の子どもを乗せ避難しました。まもなく20mほどしか離れていない球磨川が決壊したようです。
幸い、店は無事でしたが、危険でしばらく自宅の様子を見に行けませんでした。ようやく水が引き、駆け付けた自宅を見て呆然としました。敷地を含め家の周囲は車道と歩道の区別もつかず、折れた木々や流れ込んだゴミが散乱していました。
自宅1階は天井まで泥だらけ。後で確認すると、地面から2.35m、床上で1.95mの高さまで濁流が流れ込んだ跡がありました。もう1台の自家用車は見当たらず、2階へ持って上がれなかった1階のモノはすべて流されてしまいました。その中に、comuoonも含まれていたのです。
被害の大きさに心が痛みます。
ご家族がご無事で何よりでした
幸いコロナで休校中のため、子どもたち4人一緒に避難できて本当に良かった。4人がそれぞれ学校に行っていたら……と考えただけでゾッとします。
安否も確認できず、気が気ではなかったでしょうね。ご存知の通り、多くの方がお亡くなりになられました。家財道具や車は失いましたが、家族の命が助かったのは不幸中の幸いでした。
しかし、comuoonが流され、ご不便だったでしょう
この5年間、聴こえにくい大二郎はもちろん、家族みんなでテレビを見る際に当たり前のように使っていたので困りました。仮住まいに越してから、大二郎がみんなと一緒にテレビを楽しめなくなったことが残念でした。
そこでユニバーサル・サウンドデザインさんに連絡し、安く購入できないか相談したところ、寄贈してくださるとお聞きし驚くやら感謝するやら。
本当にありがとうございます。おかげで以前のように、大二郎はみんなで仲良くテレビを楽しんでいます。
comuoonで知った、テレビの楽しさ
comuoonは使い始めたのは、いつからですか?
大二郎が小学校に上がる頃、テレビでcomuoonを知り、さっそく購入。使い始めて5年が経ちました。大二郎は新生児スクリーニング検査で聴こえにくいと診断され、3歳の頃から補聴器を使い始めました。
外遊びが好きなのは性格もあるでしょうが、聴こえにくさも関係していたのかもしれません。以前はまったくテレビに興味を示さなかったのに、comuoonを使い始めたとたん、食い入るようにテレビを見るようになり、レンジャーなどの戦隊モノや、歌を聴いたり歌ったりするのが大好きになりました。
その変化は驚きで嬉しかったけれど「あぁ、今まで補聴器だけではよく聴きとれず、つまらなかったんだろうなぁ」と、少しせつなくなりました。
大二郎君は現在、自宅を離れて
熊本市内の聾学校に在学しているそうですね
入学したのは普通小学校でしたが、学年が上がるにつれ勉強も難しくなってきたので、5年生から熊本県立熊本聾学校へ転校しました。今は、月曜から金曜まで平日は寄宿舎で生活し、金曜の夜に帰宅して、日曜の夜に寄宿舎へ戻ります。
現在16人の生徒が寄宿舎生活を送っていて、高校生が14人、小学生は大二郎を含めて2人。八代市から小学1年生の男の子が来ているそうで、大二郎にとってはもう一人の弟のような存在だそうです。
聾学校への転校は、大二郎にとって新しい扉が開くとてもよい経験になったようです。手話や指文字のほか将棋も覚え、今では父親を負かすほどの腕前です。他の姉弟も、大二郎に刺激をもらっています。
聾学校では手話や指文字でコミュニケーションをとっているので、大二郎がcomuoonを使うのは週末に帰宅してテレビを見るときです。
ずっと設置しっぱなしなので、大二郎が不在の時も家族で普通に使っています。家族にとってcomuoonは、大二郎にもみんなと同じように「音がクリアに聴こえるスピーカー」という位置づけです。
聴こえやすさがもたらす〝自信〟
大二郎君は、本当に外遊びが大好きなんですね
長男の大之介、長女の彩乃、次男の大二郎、三男の大平、わが家は年子の4人兄弟です。4人が幼い頃は、とにかく必死な毎日でしたが、みんな大きくなり、子育てもひと段落というところ。
聴こえにくいのは大二郎だけですが、特別扱いはしません。もちろん必要な情報収集や環境整備はしますが、4人とも、明るく、たくましく、いろんなことを吸収し、挑戦する人生を歩んで欲しい。私たちが願うのは、それだけです。
以前、聾学校と自宅の行き来は私たちが送り迎えしていました。
しかし水害後、大二郎は何も言わないのに、一人でバスに乗って帰ってくるようになりました。戻る時も一人です。それから「できない」とは言わず、「やってみる」と口にするようになりました。
もともとやんちゃで、片時もじっとしていられない性格。野球やサッカーなど外で駆け回ることが大好きな子です。聾学校でできることが増え、自信がついたのでしょう。
これからの変化や成長がますます楽しみになりました。
comuoon導入を検討中の方に、
メッセージをくださいますか
まったくテレビに興味を示さなかった大二郎が、comuoonを使い始めたことでテレビが大好きになり、知的好奇心が一気に花開きました。また、同じ音を一緒に楽しむことで、聴こえに関する家族の認識が深まり、以前にも増して仲良くなりました。
comuoonは心の扉を開き、感性を磨き、未来への期待を高めてくれます。
使ってみれば、その価値はすぐにわかります。
家族の笑顔が増える幸せを、ぜひ体感して欲しいですね。
担当リスニングアドバイザーのコメント
この度の球磨川の氾濫により、これまで愛用されていたcomuoonが流されお困りになっていることを受け、「きこえのあしながさん」プロジェクトにより寄贈させて頂きました。元気いっぱいの大二郎くん。
訪問した際は、活発さに驚かされ、たくさんの笑顔と元気をもらいました。コミューンのマイクを使ってカラオケの練習をすることもあると聞き、私の前でも兄弟揃って楽しそうに歌ってくれたのがとても印象的でした。
人生をより豊かなものにすることにcomuoonが貢献できている様子を熱心にお聞かせいただき、心温まる一時でした。それと同時に、今も聞こえに困っている子供たちに想いを馳せ、大二郎くんのようなとびっきりの笑顔を増やしていかねばと、気が引き締まる思いでもありました。